Dr.剣木の研修日記

IGTクリニックでの研修を終えて

入局5年目の剣木憲文です。
2014年度に大阪府にある関西国際空港近くのIGTクリニックで研修させていただきました。IGTクリニックは、世界でおそらくそこでしかできない、あらゆる癌種のあらゆる部位に対する動注塞栓術を実践しているクリニックです。

院長の堀信一先生は米国で出版されました動注塞栓術の教科書の “肺腫瘍領域” を書かれる大変ご高名な先生です。

Embolization Therapy: Principles and Clinical Applications 2015/1/23
Marcelo Guimaraes MD FSIR、 Dr. Riccardo Lencioni MD FSIR EBIR

http://www.lww.co.uk/embolization-principles-and-clinical-applications

堀信一先生より毎日のようにマンツーマンでカテーテル操作をご教授いただき、治療技術の習得はもちろんの事、様々な癌患者さんの診療を経験することができました。

それまで救命、画像診断などに従事していました私にとって大変有意義な研修を行うことができ、堀信一先生をはじめ、篤史先生、末吉智先生、結城健生先生、藤島聡子さん、メディカルスタッフの皆さんには大変感謝しております。

2015年3月にIGTクリニックを退職してからも、堀信一先生のご指導の下、日本IVR学会、癌局所療法研究会、日本乳癌学会などで発表の場を与えてくださりました。

さらに業績としまして、下記の論文作成のご指導を賜りました。この場を借りて、深く感謝の意を表したく存じます。

現在、IGTクリニックはゲートタワーからさらに海近くの広大な土地に、メディカルポートを設け、2016.10に移転し、新クリニックとして開院しています。

http://www.igtc.jp/

堀信一先生の癌に対する治療法のモットーは、“固形癌に対する治療法として、手術や放射線治療、全身化学療法などの三大治療法を否定するわけでは決してなく、あくまで癌に対する第一選択は標準治療が施行されるべきである。しかし……”

今ここで、剣木には上手な説明ができず、不甲斐ない気持ちでいっぱいなので、詳しくは先月出版されました堀信一先生のご著書をご参照ください。

なぜ関空に 世界中からがん患者が集まるのか? 2017/5/26 堀 信一 宝島社

http://tkj.jp/book/?cd=02659201

なお、私の大阪での研修に際して、ご尽力いただきました徳植公一主任教授、故赤田壮市教授、齋藤和博先生、佐口徹先生には、大変感謝しております。ありがとうございました。

2017.06.03   剣木 憲文

球状塞栓物質を用いた動注塞栓術が奏効した肺腺癌胸腔内囊胞状腫瘍の1 例
剣木憲文1、堀 信一1、結城健生1、末吉 智1(現、奈良県立総合医療センター)堀 篤史2
ゲートタワーIGTクリニック1、りんくう出島クリニック2
癌と化学療法 Volume 42, Issue 11 p. 1407 – 1410 (2015)

標準治療不応となった非小細胞肺癌に対し球状塞栓物質を用いた動注塞栓術が奏効した1例
剣木憲文1(現、東京医科大学八王子医療センター 放射線科)、堀 信一1、結城健生1、末吉 智1(現、奈良県立総合医療センター 放射線科)堀 篤史2
ゲートタワーIGTクリニック 放射線科1、りんくう出島クリニック 放射線科2
癌と化学療法 Volume 42, Issue 12, 1827 – 1829 (2015)

Kennoki, N., Hori, S., Hori, A., Takeo, Y., & Oshiro, H. (2016). Transcatheter arterial chemoembolization with spherical embolic material for locally advanced breast cancer: first report of HepaSphere™ treatment for primary breast cancer. BJR| case reports, 20150417.

Kennoki, N., Hori, S., Takeo, Y., Hori, A., (2017). Transcatheter Arterial Chemoembolization with Spherical Embolic Agent in Patients with Pulmonary or Mediastinal Metastases from Breast Cancer (2017/06/03 JVIRよりAccept / 出版未)

 
****************************************************************

はじめに

この度は、本ページをご覧いただき誠にありがとうございます。
入局2年目の剣木憲文です。

2014年4月1日より大阪の堀信一先生(ゲートタワーIGTクリニック)の元で、

IVR(血管造影検査および血管内治療)の研修をさせていただいております。
4月から、佐口先生から書くように言われておりましたが、筆不精がたたり、半年が経ってしまいました。

そろそろ十分なほどの研修ネタ、大変貴重なお宝のような話が集まってきましたので、
キーワードを出して、一つずつ述べさせていただこうと思います。

なるべくわかりやすく、IVRをしないDr.にも読みやすく、
またある時は、Dr.以外の方にも読みやすく書ければと思っています。

 

 

 

2014年10月8日 マレーシア出張2日目 「プロフェッサーなんて呼ばないで」


今日はついにライブセッションの日。
昨夜は1時頃寝入り、5時には目が覚めました。
I’m a little nervous.

昨日、力尽きた研修日誌を急いで書き始めましたが、ブレックファストの時間で中断。

院長はキリッとした顔をしてDr. LukにMt. Fujiについて語っていました。

みなぎってます。。。富士山のふもとの話。。。院長のテンション。。。

もちろん All English です。みなぎってます。

会場に着いて、RegistrationするとH&AのスタッフがDr. Horiに近づいてきました。

Prof. Hori、ライブセッションの前にショートプレゼンがあるからね!

え! (剣、藤、堀のリアクション)

昨日もらったオーガナイザー(組織表? 予定表?)を急いで見てみると、、、

ライブケース①の前に
9:00-9:30 Advancement of Drug Eluting TACE by the Innovation of Hepasphere… Prof.Hori
の文字が。。。

さらに

ライブケース②の前に
10:00-10:30 HepaSphere in intra and Extra-hepatic Malignancies: indications, case Selections and pitfalls
の文字が。。。

真っ先に院長 What time is it now?

8:06です。。。 あと一時間で二つの演題を用意しなければいけません!!

会場の椅子に座り、院長の集中力は高まっていきます!!

一つは秋季大会のランチョンを使っていました。

「ヘパスフィア、私の使い方。開発者からの提言」

まさにInnovation of Hepasphere!!
Innovation 新しい切り口、方法

丁度9時になり、院長の出番です。

「まず、二つお詫びします。一つは今日はライブセッションだけと聞いていたので、講演するというのはRecognizeしておりいませんでしたのであしからず。

もう一つは私はネイティブスピーカーではないので聞き苦しいかもしれませんがあしからず。

スラスラ~」

スライドに日本語は混じっていますが、英語はペラペラEnglishですべての質問に完璧に答えられていました。

恐るべし、院長!!

そしてライブケースへ……

ライブセッションケース①
57歳男性、肝細胞癌再発病巣と腸骨転移病巣がターゲットです。

Operation Theaterへ行くと、すでに2名のDrと1名のNsが清潔になっており、シースまで入っていました。院長は清潔に、僕は外から見守らせていただきました。

技師は4,5人?(オーディエンスもいた模様)いて、寝台を動かす人、電気を消す人、DSAを撮る人、その他カメラマンが二人前後にいました。

CTはなし。インジェクションもないので、DSAを撮るときは全て手押しであり、女性のNs、Drも皆部屋の外へ逃げません。。。

ムスリム(イスラム教の人)は手術用の帽子(シャンプーハットみたいなやつ)ではなく、
(ターバンのようなもの)をつけていました。

僕の勝手なイメージですが、ムスリムは笑わないのかと思っていましたら、とても豊かな感情表現のする人ばかりでした。

助手として入っていた、香港の偉い先生? Dr. ポアはアナウンサーのように実況中継していました。

「はーい、ここで出てきましたHepasphereです」

イスラム教女性Drも合いの手を打ちます。

「まぁ、この陽気の中にはまるで何も入っていないみたいねー(Almost nothing!!)」

カテ操作をしながら、院長は会場からの質問を受けています。
その反応の良さ、思考力、英語力はとにかくすごく、、、表現に限界を感じますが、本当にすごかったです。完全に神レベルでした。

プログレートを操って、院長

「ガイドワイヤーは必要ないよ」と言いました。お得意のやつです。

それを見た、Dr.ポア・ウェイが

「Wi-Fi technic!! 」

と実況しました。。。
それまで手技に全く興味を示さなかったナースや技師を含め、皆が笑いました。

それまでほとんどのジョークを聞き取れていなかった剣木も笑いました。

Wi-Fiって汗汗汗

恐るべしDr. ポア・ウェイ
(僕の名前はノーウェイ(仕方ない)のウェイだよ。へへへ~と自己紹介してくれました)

ノンガイドワイヤースタイルって、、、日本人的な、まじめすぎる発想に羞恥心を感じました。

さてカテがターゲットまで着きました。

次に動注薬剤と塞栓物質、何を吸着させるか……

実はそれまでに、僕は院長の指示通り、使える薬剤の幅を調べていました。

Irinotecanしか用意されていませんでした。普段我々が使用するCDDP, DOC, MMC, ADR, 5‐FUなどを外回りのナースに聞いて、薬局に問い合わせてもらっていました。

その時手に入ったのはCDDP, MMC, ADRでした。

とりあえず、本症例はIrinotecanだけ使おうという事になりました。

でも、、、いつもの10%NaCl:造影剤=1:4のソルトニンを作る過程はどのように説明すればいいでしょう。

ちなみに、10%NaClは手に入らず、20%NaClならあるわ と外回りのNs

僕が困っていると、院長が

よし、20%なら使えるぞ、1:8にすればいいんやぁ

あ。中学レベルの比の計算が瞬時にできず自己嫌悪。。。
そこにあるもので対応。院長の集中力半端ないっす。
まるでキャンプの時の頼れるお父さん状態であります。

1:4、1:8の組成の意味は? と質問

造影剤でHepasphereを溶くとMSは4倍の大きさになります。
ソルトニンと呼ばれるこの組成の溶液で混ぜれば2倍前後に抑えられます。

なるべく小さい状態で球状塞栓物質を入れ、血管内で徐々に大きくなって(Expandして)末梢血管にピタッとはまるのです

Irinotecanの分量も決めて、レッツ塞栓!

ゆっくりになってきたねぇ と院長

塞栓後、いつものように5分待って、再分布を説明する院長。

ほら、早くなったでしょ。と再塞栓へ。

ディスプレイには塞栓前、塞栓後を交互に出していました。

This is before, and this is after!

Ohとわかりやすく納得する会場のみなさんです。
ディスプレイは当然ブラウン管であり、画面は三つありましたが、左右に提示するのは無理なのでした。

最後に会場から、もう5分待たなくていい? と聞かれました。

根治を目指すなら待つけど、この人は他にも転移があるから、あまり意味ないよと院長。

ここで学会会場に戻ってエクストラへぱてぃっく(肝外病変)のレクチャーです。

もうオペ着に白衣を羽織ったままの登場です。

ライブケース②
鼠径リンパ節(原発はHCC?)転移に対する症例。
シェファードフックカテーテルをいつも通り

外腸骨動脈へ。腸骨回旋動脈へ。
内腸骨動脈から腸腰動脈へ。

と言って、院長が気づきました。

「おい、あのさぁ、一円玉! おいてくれへーん?!」

とっさに用意をして、ズボンのポケットにあったマレーシアのコイン(20セン?)を置いてみたところ、透視すると真っ黒に。

「これじゃ濃すぎるねん、一円玉……探してきてくれへーん?!」

と院長。

そこから一円玉争奪戦争がはじまりました。

藤島さんが持ってるはず!?

院長がOperation Theaterから学会会場に

「僕の秘書の藤島聡子、おらんかーーーと叫びます」

なんとか、院長のポケットの中から財布を取り出し、一円玉をゲット。

透視をしてみると、程よく見えて、程よく透ける。
なんで??と問われたので、

たぶん、一円玉はアルミニウムでできているからだろうと答えてみました。

治療が成功したら皆で記念撮影です。
偉い先生たちは皆、陽気でした。

ここで昼食です。ビュッフェ形式でした。
全然時間通り回らず、押しまくっていますが、とりあえず、何も考えず駆け込みます。

再び廊下を通ってOTへいく日本人二人です。

僕はちゃっかりデザートを持っています。

ライブケース③
再びDr. ポアがアシスタントに入ります。
本ケースは巨大肝細胞癌でAPシャントのある症例です。
院長はまず、手技を始める前に会場に向かって言います。
このようなシャントがある場合は、いくらHepasphereを入れても、止まりませんので、僕はゼラチンスポンジを使います。

ゼラチンスポンジを切るように僕にオーダーする院長。。。

お前はジェルフォームカッターか!! と突っ込むDr. ポア
彼、最高ですw

結局は準備を整え、院長に切っていただきました。

ジェルフォームは濡れすぎてしまうとペラペラになって切りにくくなってしまうので、ガーゼを良く絞って、絞っても絞ってもまだWettyなので、DryなガーゼでWetなガーゼを包めてまた絞ります。絞る動作を見て、またDr. ポアが…

「握ってます。握ってます。まるで寿司のようです」

とコメントする始末。

鮮やかに、こまやかに切る院長の手技に目を真ん丸にしてみているオーディエンス

医師、看護師、技師、の垣根を越えて、オーディエンスは皆同じ目をしていました。

ジェラチンスポンジが切れたところで

The first job of the regident is to make it.

と言ってみました。

シャント血流を止めて、この症例は終了。

再び記念撮影です。

ライブケース④はHCC原発、HCC右肺転移、乳癌術後再発です。
院長はDr.らに伝えます。
第一に右肺転移を気管支動脈から狙ってEmbolization。薬剤はCDDPとADRを使うよ。
次に狙うのは乳がんの再発病変。薬剤は同様でいくよ、JB-1用意しておいてね。

手技の前にソルトニン1:4を作り、ADR loaded Hepasphereを作り、、、IGTとほぼ同じスピードで。

違うのはすべてDr.が本気で混ぜ混ぜしている所です。

「プロフェッサーって呼ばれたくないんやけど……」

と院長。

仕方ないです。院長に対して ドクター というのはもはや割に合わない代名詞。。。今日は、出ました、院長の底力!!

全症例を終えた院長は学会会場に戻り、抗癌剤についてのディスカッションに参加。発言されていました。リアリー・タフネス・Prof. Dr. Hori!!

その後、味の濃ゆいマレーシア料理を食べて、次のホテルに移動。
移動中、僕ら3人は眠るでもなく、とてもQuietでした。

今日は最高の一日でした。

 

 

2014年10月7日 マレーシア出張1日目


三か月前のある日、カテーテル治療の真っ最中に

「今年中に一回、海外行かせたるわぁ」

院長がポツンと言いました。

あまりに唐突で「……ありがとうございます」としか言えませんでした。

次に、もっと具体的に

「中国とマレーシア、どっち行きたい?」

と問われると僕は「マレーシア!!」と即答するのでした。

MYSIR(マレーシアのIVR学会)からライブセッションの要請を受けている院長。
僕をアシスタントとして同席させていただける内定めいたお話だったのです。

今日がそのマレーシア出張の初日でした。
とてもタフな一日となりました。

数日前から風邪を引いていた僕はマスクをして出かけました。
咳をしたり、会話に出遅れると院長や藤島さんが気遣ってくれました。

「大丈夫です。良くなってきました」

どんなに咳込んでもネガティブな発言はしないと決めていました。

午前11時に関空から出発し、現地時間で17時にマレーシア空港に到着

機内食はこんな感じでおいしかったです。日本食ベースでした。

KIX(関空)と同じく、空港内電車で関税、入国審査の場所へ。

空港では中国、香港のメリットメディカルの方々が出迎えてくださいました。

香港から来たDr. Luk(40代後半?)も来られ、ご挨拶しました。

香港メリックのパンジーは2週間ほど前にIGTクリニックを見学された方で
とても聞きやすい英語を話されます。院長と握手、藤島さんとハグをされていました。

それから車で30分ほどかけて市内へ。(空港の周りは一面の畑でした)

病院を通り、18時半にホテルに着きました。

マレーシアは熱帯地方であり、ホテルにはプールもついていました。

そして、コンセントプラグは複雑な形をしていました。。。

ホテルは病院の目と鼻の先でした。

ここでメリットの香港、台湾駐在の方と合流しました。

メリットの方がDr. Horiに 疲れていないか? カンファより先に夕飯にするか?

と尋ねてこられましたが、

Dr. Horiは、まずカンファが先だ! と答えられました。

笑顔の歓迎ムード一色の皆さまと対照的に、
僕らは明日のライブセッションの事で頭がいっぱいでした。

18時45分にロビーに集合となり、ひとまず部屋に荷物を置きに行きました。

マスクを取り、顔を洗って、コンタクトレンズをして少し早目に行きました。

ロビーには誰も来ておらず、座っていると、Dr. Lukが来られました。

Dr. Lukとの会話。

「マレーシアは初めてですか?」

「はい、あなたは何回も?」

「15年前に一度来ました」

「僕は卒後4年目の医師です」

Dr. Lukは核医学、PETなどとIVRが専門だと言いました。

「日本は昨日、台風Tyhoonが来ていましたが、大丈夫でしたか?」

「大阪はそれほどの危険も被害もなかったようです。よくご存じで」

「僕は核医学を専門とするから、
東北地震の後の原発事故はとても危険だと思いました」

等と、会話しました。

そうこうしているうちに院長、藤島さん、メリックのスタッフが来られました。

その時、パンジーに、「あ、あなたはIGTクリニックにいた先生ね」とRecognizeされました。

「マスクをしていたからわからなかったわ」

「風邪をひいてしまいまして」

「そしたらビタミンcが必要ね」

「はい」

というような会話をしました。

どっちが医者かわかりません。

再び病院に出向き、学会スタッフらと本学会を主催されているDr. Alex Tangにご挨拶をしました。

ここで明日ライブセッションをする4ケースの患者さんについてDr. AlexよりPresentationがあって、
Dr. Horiが一例ずつ自分の見解を述べました。

Dr. Horiの英語は僕は大好きです。
非常に知的でリズムと勢いはいつもの日本語の院長のコトバを連想させます。
最初静かに話し始めて、話途中から徐々に感情も込められて行きます。
やっぱり院長、ここにきて、みなぎっています。

夕飯は中華でした。Dr. Alex, メリットの皆さんと食べました。
その後に4人の患者さんとご挨拶をして、その後、OT(Operation Theater)を視察。

最後にDr. Alexより再び読影室で画像を供覧してもらいました。

ホテルに帰ったのが23時半頃。
ここからまた一例ずつ、院長と術前カンファレンスをしました。

病状と治療意義、目的腫瘍に血管、マレーで使用できる薬剤、持参したカテーテルと
現地にあるカテーテルの選択について確認しました。

日本時間25時頃自室に帰り、就寝。

はたして明日はうまく治療が出来るのでしょうか。
滞りなく手技が出来るのでしょうか。
明日は超エキサイティングな一日になりそうです。

 

 

2014年10月4日
勇内山先生が来られました。


東京医大から勇内山先生がIGTクリニックの見学がてら、
僕の様子を見に来てくださいました。

僕はこの通り、元気にやっていまーす♪

勇内山先生は、午前中、僕と院長で入ったカテーテル3件を見学されました。
めっちゃ緊張しました!!(;^ω^) でもしっかりやれました。

午後は院長のレクチャー、温熱療法の体験をされて帰られました。
勇内山先生、ハードスケジュールでしたが、お疲れ様でした。

IGTクリニックでは門戸開放、いつでもどなたでも見学を受け入れています。
興味のある方は是非ご連絡ください。

 

 

2014年10月3日 下肢静脈血栓症

入局一年目の時、茨城の阿見で当直をしていて、中年女性が心肺停止の状態で運ばれてきた事がありました。まだ若い夫と4人の子供達が遅れて車で駆けつけてきました。

夫と小学生の子供はオロオロと泣いており、20歳くらいの長女が毅然とした顔で僕の質問に答えるのでした。

『母は2か月前から足がむくむようになって、でも忙しくて病院に行けませんでした。私たちが説得してやっと明日病院に行く予定になっていました』

健康診断もまともに受けていないような患者さんで、僕は必死にこの長女の言葉に耳を傾けるのでした。

麻酔科、外科の先生も応援に駆け付けてくれましたが一度も心肺蘇生は叶わず、女性は帰らぬ人となりました。

諦めるきっかけとなったのは一枚のレントゲン写真でした。
大きなナックルサイン。下肢静脈血栓が肺に飛んで、肺塞栓症を起こしたのでした。
後から見てみると、心電図にもしっかりと右室負荷の所見がありました。

昨日まで、さっきまで普通に歩いて、会話もしていたお母さんが、一瞬にして帰らぬ人となるという、恐ろしい病気が肺塞栓症です。

いつまでも泣き続ける家族が忘れられません。

IGTクリニックでは癌治療の他に、子宮筋腫に対する治療として子宮動脈塞栓術をしています。
大きくなった子宮筋腫に供血する血管を塞栓することで症状の緩和、筋腫のサイズ縮小を狙います。(10月2日発売の女性セブンに当院のUAE治療が取り上げられています)

女性はピル、妊娠、子宮筋腫と血栓リスクが非常に高く、術前の検査での血栓診断が欠かせません。

悪性腫瘍ならまだしも、良性子宮筋腫を治療しに行って、血栓が肺に飛んで心肺蘇生を起こしてしまっては患者さんにとって、それは不利益以外の何物でもないわけなのです。

写真は当院の術前検査で実際に血栓を認めた症例です。

明日は勇内山先生が見学にいらっしゃいます。
お久しぶりの再会が楽しみです。

 

 

2014年10月1日 ソロ・フライト

パイロットの卵が一連の飛行訓練をして、初めて一人で飛行機を操縦する時、スゴイ緊張感なのだと院長は言います。

それまで隣に座ってくれていた教官がいないという状況。
自分がミスをしたら墜落するという恐怖心。

遊園地のジェットコースターに乗る時でさえ「もう乗らねば仕方ない」と、一種の‘諦め’をつけるまでに結構な時間を必要としてきた僕(出来る事なら乗りたくないと)にとって、想像しただけでも背筋が凍ります。

院長は研修の合間にプライベート話をしてくださいます。

もともとは飛行機を作る技術者になりたかったという院長。
飛行機に対する思いは強く、実際に飛行訓練をされ、ソロフライトデビューもされています。飛行経験も日本とアメリカであるそうです。

そんな院長が、僕にカテーテルのABCを教えてくださいます。

「剣木君もそろそろ、ソロ・フライトしてみるか!?」

カテ研修を始めて半年、やっと、でも自然にこの日は訪れました。

ジェットコースターの時はためらうけれど、こういう時僕の返事は音速より早いです。

屈託のない笑顔と根拠のない自信に満ち溢れた顔で はい と答えます。

今までずっと隣にいてくれた院長がいない環境。
ミスをしたらすべて自分で対処しなければいけない状況。
本当にやれるのでしょうか。
でも僕はやるしかない! と思うわけです。

まずは術前カンファレンスです。
どういう患者さんで、どこの血管を狙って、どの薬剤を使用して、どのカテーテルを選択する旨をナースと技師さんに伝えます。

いつも院長の後ろで見ていたのを思い出して、要点を述べます。

それから……

手術用ガウンを着て、アンギオ室に入り、準備を始めます。
落ち着いて。いつも通りに。

準備が出来たら針を刺します。
落ち着いて。いつも通りに。

針が入ったらシースを入れて、ガイディングカテーテルを挿入し、目標血管を見つけます。

なかなか見つかりません。
落ち着いて。いつも通りに。
落ち着いて。いつも通りに。
落ち着いて。いつも通りに。

院長についてもらって手技をする時の事を思い出します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

僕の方が早く着替え、アンギオ室に入って準備をしても、最初の局所麻酔の注射まで時間を稼いで院長の登場を待ちます。

一人で刺すのが怖いとか、自信がないからではありません。

患者さんは院長に自分の体を預けています。

僕のような若手が一人で、手術用ガウンを着て準備をしていると、それだけで患者さんは不安な顔をします。

特に初めて治療を受けられる患者さんにとっては、手術なんかよりずっと安全で体のダメージも少ない治療ですよと説明しても、何をされるかわからない気持ちです。まるでジェットコースターに乗せられる僕のような。

アンギオ室に入るとまず、
「院長が来るまでに、準備を進めていきますね」
と一言お声掛けする癖がつきました。

全ての準備が整い、僕はニードルを持ってスタンバイします。

院長が部屋に入り、

「じゃあ今から始めるね~、怖い事、起こらないからね~、はーい♪」

そこで初めて僕はニードルをスキンに対し45度の角度でパンクチュアします。

術中も院長はインカメで常にアドバイスをしてくださいます。

「じゃあさ、まずは○○の血管、行って~」
「そう、そう、そこや~、うまい!!」
「こういう時はやな~」

―――――――――――――――――――――――――――――――

カテーテルが目標血管でない血管に入ったのがわかりました。

目標血管でないからと、慌てて引き返そうと思った瞬間、院長の次の言葉を思い出しました。

「カテ先がなんか変な挙動を起こして、どこかわからない血管に入った時はやな~、すぐに抜かないで、必ず撮影した方がいいぞ。もう二度と引っかからない、有用な血管に入っている事って結構あるからなぁ」

造影撮影してみると、まさに腫瘍に供血する枝の一つでした。

別にそうじゃなくてもいいんです。
腫瘍とは全く関係のない血管だとしても、引っ掛かった時に撮影をする癖をつける事が堀チルドレンの手技の強みとなるわけです。

後に、最初から狙っていた血管にもカテーテルが入りました。
必死過ぎて、どうして入ったか全く覚えていないけど。。。気づいたら入っているのでした。

後で患者さんに治療内容について説明すると、

患者さんは後から遅れて診察室に入って来た奥さんに
「先生が新しい血管見つけてくれたよ」
と話されていました。

僕らの仕事は癌の患者さんのお胸やお腹にある腫瘍に抗癌剤を流して、血流を閉ざしてあげる事です。
一見、ジェットコースターよりずっとずっと怖い事をしているようですが、僕でもやれる! と思える瞬間が沢山あります。

アンギオに出会って良かった。
院長に出会って良かった。

「そこや~、うまい!!」

 

 

2014年9月29日 ノンガイドワイヤー・スタイル


大阪赴任してから丸半年が過ぎました。
最近、某医療業者が現在開発途中のマイクロカテーテルSampleを持ってきました。

「使い勝手はどうでしたか?」
使用後に、業者の方から聞かれます。
僕のような若手にも熱心に耳を傾けてくれます。ウレシイネ(^^)

カテの先端が柔らかく、血管選択性には優れていますが、
カテの手前の所が折れ曲がったり、たわんでしまいますね……

先端に、血管選択性を持たせるには、手前の所もやわらかくなくては実現しないそうで、
そこがジレンマなのだとか……じゃあどうする??????
僕の仕事ではないので、これ以上は考えない事にしよう。

そんなわけで……

今日はIGTクリニックで使用している、マイクロカテーテルの話をしたいと思います。
まず、一番多く使用しているマイクロカテーテルはなんといってもTERMOのプログレートです。
院長は言われます。

「カテを、限られた時間内で、円滑に行うには、なるべくガイドワイヤーを使わない事やぁ!
若い女性なんか、ほそぉい血管にスパズム起こしてみぃ、スパズム解除されるまでに、長い時は30分待たされるでぇ」

これが院長直伝! Non-Wireスタイル!!

どういうことかと言うと、一般に血管選択をする際には、
マイクロカテーテルの中にさらに細いガイドワイヤーを挿入します。
ガイドワイヤーを進めて血管を選択し、マイクロカテーテルをガイドワイヤーに沿わせて進め、ガイドワイヤーを抜くという方法です。
しかし、いくら細くて、先端柔らかで安全なガイドワイヤーといえど、リスクはあります。

動脈硬化の強い患者さんでは、ワイヤーで脆弱な血管をついてしまい、
動脈解離を起こしてしまう事も考えられます。
そして、先ほど述べたスパズムもガイドワイヤーで
ガシガシと動脈をつつくことで起こしやすくなると考えられます。

なるべくガイドワイヤーを使いたくない。
でも、マイクロだけで方向を定め、行きたい血管に行けるのか。

そこで有用なのがプログレート、JMSのナデシコ、東レのエストリームなどの、
ノンガイドワイヤーで血管選択をしやすいマイクロカテーテルなのです。

それでも予定していた血管にうまくカテーテルが入らない時は、院長

「ガイドワイヤー出してくれへんか、な♪ 」

と言います。しかし、指示を受けた看護師はすぐには出しません。
ゆっくり準備します。

たまに、指示、聞いてねぇんじゃねぇのってくらい緩慢な動きをしています。
でも、それは決して院長に意地悪をしているのではなく、、、

次の瞬間、必要なくなることを知っているからです。

院長「ガイドワイヤー出してー、ああ、やっぱり、いいや、入った! はい、撮影ぃ!!」

血管治療歴30年の院長にも、マイクロカテーテルが目標血管に入らない時は入らないけれど、
「ガイドワイヤー出してー」と言った(半ばノンガイドワイヤー法を諦めかけた時、その)
直後の院長の集中力は半端ないです。湯気、出てます。

院長はそのように、実践を僕に教えてくださいます。

「諦めかけた時がチャンスやでぇ~」

参考HP
TERUMO プログレートシグマ

http://terumo.clinicalsupply.co.jp/product/ivr/progreat_series.html

JMS ナデシコ

http://www.de-hon.ne.jp/digital/bin/product.asp?sku=2000003299110500200P

東レ エストリームローザ

http://www.toray-medical.com/medical/ivr/detail.html?id=04731C9C2E208F8349257BAC001877BC

コメントは受け付けていません。